タクローレポート1(宮古市田老「学ぶ防災」)

あなたはまだ東日本大震災を知らない

〜宮古市田老「学ぶ防災」が教えてくれる真実〜
タクローレポート1

2019年3月11日、8年前にあの大地震に襲われた場所・岩手県宮古市田老。冬の寒さと雨が降るこの地の道の駅で「学ぶ防災」に参加し津波遺構の見学をした。

震災のあった翌年から毎日行われているこの企画に参加するのは、容易ではない。東京駅から東北新幹線で盛岡駅に到着、さらに本数の非常に少ないJR山田線、三陸鉄道リアス線を経て約5時間。その過程を経てようやく最寄りの「田老駅」に到着するのだから、交通の便はお世辞にも良いとは言えない。それでもこの催しに参加すべく年間2万人の見学者が訪れ、予約必須の状況が今も続いているという。

震災から時間が経過した2019年現在もここまで人気である理由。それは「テレビで見た映像ではない、東日本大震災の生の姿に触れられるから」だと参加して思った。

まず道の駅で今回の案内人である鈴木重男さんと合流。田老に残る震災の痕跡を彼の解説を聞きながら、街の各所にある津波関連施設を見て回り始めた。
こちらは津波の高さを物語る車道越しの壁。人間をいとも簡単に飲み込む、4メートル以上の波が押し寄せたのを物語っている。

街にある防潮林。以前は無数に生い茂り街を災害から守ってきた。しかしあの震災の津波はその守護神を蹂躙。ほとんどの木が流されて現在の風景が完成してしまった。

そして田老の象徴である防潮堤(地元では防浪堤と呼んでいる)。この壁を超え、津波が街を飲み込み、各所ではかつて民家のあった空き地、そして今も工事が続く地域が続く。8年の歳月を経て復興は進んだものの、当時の様子を鮮明に物語る光景に思わず絶句した。

そしてその最後に訪れるのがこの「たろう観光ホテル」。1・2階は極めて被害が激しいが、被害のなかった上階(6階)の1室では震災当時の映像が上映されている。

この部屋での映像は、動画サイト等では一切公開されていない。そこにはあの大津波が町を襲った日、その光景をホテルのオーナーがこの場所から撮影した一部始終が描かれていた。窓からは海に面した風情ある田老の町が、画面から同じ光景が津波に食われていく03.11の映像が見ることができ、あなたはそのギャップに言葉を失うだろう。この体験は、世界でこの部屋でしか味わえない。

案内役を務めてくださった鈴木さんは最後にこう語ってくださった。
「震災の1年後からこの見学ツアーは開催しています。今も多くの方が参加してくださっている一方で、皆さんから震災の記憶が少しずつ風化しつつあるのも感じていますね。田老の町興しをしつつ、あの日この場所で何が起きたのかを皆さんにこれからも伝えたいです。将来的には青森県から宮城県まで含んだ『三陸ジオパーク』と連携し、この活動を続けていこうと思っています。」

「学ぶ防災」の料金は1時間4000円、2時間10000円となっている。個人での参加の場合は高く感じるかもしれないが、2名以上のグループで来ると割安と言えるだろう。
この田老の地には他にも多くの魅力がある。独特の食感が口に広がる真崎わかめ、もっちりとした肉質のどんこ(注)をはじめとした海産物。震災の記憶をじかに触れた後は、三陸の海の幸を味わい1日も早い復興へ祈りを捧げてほしい。
(注:えぞいそあいなめという魚:学ぶ防災の隣の善助屋食堂で味わえるどんこの唐揚げの入ったどんこ丼は田老らしいお勧めの一品)

宮古観光文化交流協会 学ぶ防災 〒027-0307 岩手県宮古市田老二丁目5-1
Tel:0193-77-3305 FAX:0193-65-7501

文・撮影 ダイゴロ

タクローレポート補足

このタクローレポートは、NPO法人タクローの会が高知県黒潮町と岩手県宮古市田老に津波実水体験博物館を設立することを実現するにあたって参考にする(将来的な連携も含める)ために、今ある津波関連施設を見学・インタビューしてその特徴を報告するものです。今回レポートする施設に関する補足を下記にまとめました。
1. 名称:学ぶ防災
2. 場所:岩手県宮古市田老、田老-道の駅
3. 特色:
(1) 震災遺構の田老観光ホテルがあり、そこで震災時の動画を見て、震災時の災害の傷跡を見学することによって、津波災害の危険性を学習できる点が一大特徴。
(2) 防災として「情報を早く入手して速やかに避難すること」を教えている。そのためにも津波災害の凄まじさを知り普段から避難の道を知っておくことが重要であるとのこと。
(3) 職員5名で年間2万人(以前のピーク時3万人)の見学者に対応しており、予約が必須である。(予約なしでも空いている時には極力対応しているが、限界があるとのこと。)予約電話番号:0193-77-3305 (携帯:080-5739-6423)
(4) リピーターも多数(2回目に家族で来たりするケースや、学校関係や旅行会社の団体も少なくない。)とのことであるが、更に同じ人が繰り返し来るような動機となるものがあると、より来場者増になるのかもしれない。
(5) どんこの他に、季節によりうにやアワビも味わえる三陸の海産物に恵まれた地である。
4. 東京駅からのアクセス(2019年3月時点):
東北新幹線、JR山田線、三陸鉄道リアス線を使って最短で約5時間

  • JR山田線が3~4時間に1本しかない時間帯が多く乗り継ぎが不便、又、これだけで2時間強かかるので、ネックになっている。三陸鉄道リアス線も便数が少なく、不便。
  • JR山田線の代替えとして県北バスが盛岡-宮古間を走っている。こちらは日中1時間に1本あり、所要時間もほぼ同じで、2時間強。但し、料金が別途2000円強かかる。
  • 三陸鉄道リアス線の代替えとしても県北バスが宮古―田老間を走っている。便数が少ないが田老の道の駅近く(田老中町が最寄りバス停)まで行ってくれるので便利。
  • 特に、夜間は宮古-田老周辺で公共交通機関の便数が少ないので、要注意。
  • 羽田からいわて花巻空港まで飛行機で来てレンタカーを使用する方法もあるが、東北新幹線が東京-盛岡間最短で2時間15分と結構早く、公共交通機関への連絡も数多くはないがより利用し易いので、新幹線ルートがお勧めである。
  • 車によるアクセスも考えられるが、東京からだと、盛岡までで新幹線の時間(2時間15分)の4倍以上かかると思われるので、かなり難しい。

5. 料金設定:個人及びグループに対して1時間4000円、2時間10000円

  • 個人で来ると高く感じるが、2名以上のグループで来ると割安感がある。
  • ドンドン大人数で来てくださいとのこと。

[NPO法人タクローの会]